第191回ザ・チョイス審査レポート

予定時間を少し回って福田さんが到着。ご本人の意向もあり、そのまますぐに審査開始です。「審査を引き受けておいてナンですけど、実は最近のイラストレーションの傾向みたいなものを把握していないんです。でも、流行とかそういうのは関係ない方がいいかなと思って、あえて見てきてません。自分がチョイスに出していた時と今は状況も全然違っているからどうなるか分からないけど、（作品から）伝わる熱量はすごいですね」

福田さん自身もチョイス出身者。初めての入選は1988年（第39回／No.51）と20年以上も前、現役の学生でした。通算7回の入選を果たした「常連」でしたが、年度賞は獲れなかったとのこと。「今とは絵柄も違いますし、まだその程度の実力だったんでしょうね（笑）」と当時を振り返りますが、その後の活躍はご存知のとおり。

福田さんは次に残すものは「アリ」、残さないものは「ナシ」で、あまり考え込むことなくテンポ良くジャッジしていきます。早すぎず遅すぎず、一定のリズムで判断する印象です。出だしから最初の5分ほどはほとんど残る作品がありませんでしたが、徐々にポツポツと作品が残りだしました。

1時間ほどで一通りの作品を見終えました。特別スピーディーな印象はないのに、無駄な時間がほとんどなかったからか、快調なペースです。1回目で残した作品数は、平均よりも絞られている感じ。ここでコーヒーブレイク。休憩の合間にしばし雑談。ご自身がチョイスに応募していた時の話題も出て、応募者にとって参考になりそうなお話が次々と飛び出します。

「今はネットとか、作品を世に出して行く手段がいろいろありますけど、僕らの時代はチョイスなどのコンペに応募するしかデビューのきっかけがなかった。毎回出すことで技術的にも上手くなったし、（他の入選作品を見ることで）周りの傾向なども見えだしましたね」

「チョイスに応募していたのは3〜4年かな。学校（大阪芸術大）を卒業してプロとして活動を始めてからも、しばらくは出していました。落ちたらやっぱり悔しいけど、その気持が次につながっていきました」

「審査員によって画風やモチーフを変えるっていうのは、イラストレーションではアリだと思うんです。僕もいろんな絵で出しましたし、それは楽しかった。いろいろやってみて、一つ（画風が）出来たらそれで1年ぐらいは続けてみる。そういう模索は今でも続けています。イラストレーションは一つのスタイルに捉われなくてもいい」

「“継続は力なり”で、長く続けて行くためには何が大切か、それは絵を描くことがいかに好きでいられるかだと思う。そのために常にいろいろ刺激を求めていて、新しいスタイルの模索もその一つ。人から見るとたいして変わらないかもしれないけど、自分の中では少しずつ絵を変えているんです」

さて、審査再開。1回目よりはゆっくり、じっくりと作品を眺めます。さらに絞り込んでいくますが、この段階で残す人は、すべての作品ではなくいいものだけを残す方針に。この方があとのジャッジがしやすいという判断です。

2回目の審査が終わって、いよいよ最終審査。残った作品をすべて机に並べます。ここからは絞り込むのではなく、福田さんはチョイスする作品をピックアップしていきます。すでに選ぶと決めていたものがあるのか、次々とテンポ良く決まっていく印象です。入選、準入選の順で計16人分を選んだところで、選んだ作品だけを並べて再考します。

ここでいつも多少の入れ替えがあるのですが、他の審査会と比較すると入れ替えは少なく、スムーズに決まりました。唯一、最後の一人を決める時だけしばし考え込み、最終的に16人以外から一人をピックアップして他と入れ替え、入選・準入選が確定しました。あらかじめ作品を絞り込んだこともあり、誌面掲載する入選作品の選定もスムーズでした。夕方5時、まだ明るいうちに審査は終了。お疲れさまでした！

審査結果は下記のとおりです。

入選▼

● 浅沼有璃（東京都）

●岡田喜之（東京都）

● 鬼塚敬子（神奈川県）

● 松園量介（東京都）

● 水内実歌子（東京都）

● 川島慎平（東京都）

● 田中春香（愛知県）

● 高井雅子（東京都）

● ささきなるみ（東京都）

●森下朝菜（東京都）

準入選▼

●玉川桜、波田佳子、阿部隆一（以上東京都）●山本伊代奈（京都府）●山口新（群馬県）●ヌトグラン（北海道）

入選・準入選作品と福田さんの講評、総評は7月18日発売のイラストレーションNo.203に掲載します。