第199回審査 牧野千穂さんの審査
イラストレーター牧野千穂さんによる第199回ザ・チョイスの審査が5月25日に行われました。応募数は約270人、800点。
まだ5月なのに外はすでに夏の気配。午後2時、牧野千穂さんが到着。やや緊張した面持ちで、「人の絵を見るなんて今までやって来なかったので大丈夫かな」と一言。スタンバイしているスタッフの手袋を見て「私も手袋はめていいですか? 緊張で手に汗かいています」
さて審査開始です。
牧野さんは1点ずつ作品を手に取り、じっくり丁寧に見ていきます。そして必ず裏面の応募票のコピーを見てタイトルを確認します。
「私自身エディトリアルの仕事をしているので、タイトルは気になります。何を表現しているのか知りたいし、だからちゃんとつけてほしい」
見て気になった作品は「残します」、落とす時には「ごめんなさい」「ありがとうございました」と言って、スタッフに作品を渡します。このあたり、応募者や作品に対する敬意と感謝の気持ちが伝わります。
「ちょっとペース遅すぎますか? いいところを見落としちゃいけないと思うと、どうしても時間がかかってしまって」 最初のうちは「残す」作品がほとんどで、絞り込みに苦労しているようです。「う〜ん、なかなか落とせないなぁ。もうちょっと厳しくしないとマズイですよね。まだその辺の自分の基準が掴めない」
少しずつ作品を絞るようになってきて、次に残す作品と残さない作品が半々くらいになってきました。
一通り作品を見終えたのは17時過ぎ。審査開始から3時間ほどでした。
コーヒーブレイクの間に感想などを伺います。
「絵を見るのは楽しいです。絵に関して、私自身のストライクゾーンは狭いと思っているので、広めに残すようにしました。もう1回見てみたい、見直したらまた違って見えるかなと思ったものは残したし、色がきれいなものはけっこう残っていますね。でも、そういうのばかりだと物足りなく思えてくる。もっと見たいと思わせるかどうか、その点、世界観が見える人はやっぱり強いです。質感やマチエールは好みだけど描いているものがピンとこなかったり、うまいけれど、どこか既視感のあるものは選びにくかったですね」
牧野さんご自身についてのこともお聞きしました。
チョイスの応募者の年齢幅の広さに驚いたそうですが、牧野さんが本格的にプロの道を歩み始めたのは30歳過ぎと遅い方でした。
パステルの手法により、装画、挿絵、絵本と活躍の幅を広げてきた牧野さん。挿絵の仕事を始めて3年目で講談社さしえ賞を受賞するなど、ご本人によれば「幸運にも恵まれていた」とのことですが、近年は絵本の仕事が増えていて、かわいいものから怖いものまで幅広く手がけています。
牧野さんもチョイスには2度ほど応募したことがあるそうです。
「(作品世界が好きな)藤田新策さん審査を選んでチャレンジしたんですけど、全然引っかかりませんでした。ですから、もしここでダメでもプロになれるチャンスはありますよ、とお伝えしたいですね」
2次審査へ。
まだ多くの作品が残っているので、1次審査同様一人ずつ作品を出して見ていきます。
相変わらずじっくり丁寧に見ていきますが、1回目よりジャッジは早くなりました。
「もっと厳しくしないとダメですよね。ここから1/3ぐらいかな」と言いつつ、絞るのはなかなか大変そう。それでも、半分以下まで絞られました。
残った作品を全部机に並べるのはまだ無理なので、とりあえず並べられるだけ並べて、落とすものと次に残すものとを同時に選びながら、空いたスペースに作品を追加する形で3次審査を進めます。
何人かを落としたあと、入選候補をピックアップ。割合ポンポン決まっていく感じでまず8人が選ばれ、この段階で残った作品がすべて机に並びました。
「(入選・準入選合わせて)16人までですよね」と確認しながら、さらに2人を選んで入選枠分10人を決め、準入選を何人かを選んだところで、机の上の作品から最終選考に残すものを選び、それ以外を片付けます。
いよいよ最終審査。
入選・準入選候補を机の片側に寄せて並べ、少し離して次のピックアップを待つ作品を並べます。
数えると入選・準入選候補は13人分あったので、残りはあと3人。
「緊張するなあ」と一言。机の周囲を回りながら作品を手に取り、丁寧に見直します。
そうして、残り3人をピックアップしました。
「でもまだ、決まった!という感じがしないなあ」ということで、ピックアップした16人分と、まだ迷っている数名分を並べて再度チェック。
結局入れ替えはなし、ということで、16名を入選と準入選に振り分けます。
ここもある程度固まっていたようで、すんなり入選10名と準入選6名が確定しました。
最初から丁寧に見ていったので時間はかかりましたが、そのおかけで最終局面ではほとんど迷いませんでした。
審査結果は下記のとおりです。
入選▼
●楓 真知子(東京都)●伊藤健介(東京都)●髙橋祐次(東京都) ●阿部 結(東京都)●大岡奈都子(広島県)●越智あやこ(東京都) ●熊谷 玲(神奈川県)●佐藤英行(埼玉県)●太田侑子(京都府) ●原 倫子(東京都)
準入選▼
●中上あゆみ(神奈川県)●船津真琴(東京都)●植田陽貴(大阪府) ●市川夏希(千葉県)●南 景太(岐阜県)●岡野 茜(千葉県)
最終選考まで残った人々▼
西島 知(静岡県)遠藤理子(北海道)大場ケンイチ、Tsuin、山口ユリエ、坂之上正久、高橋さとみ、木原未沙紀、丹野杏香、カマノレイコ、エグチジュンコ、すぎもりえり(東京都)鹿島孝一郎、anata(大阪府)小形有希(徳島県)美木麻穂(神奈川県)西村隆史(兵庫県)
作品の絞り込みは、誌面に並ぶ時の色味なども意識しながら進めました。審査終了は夜8時すぎ。お疲れさまでした。
「(入選作品は)絵本的な物語っぽいものが多くなりましたね。これだけの作品を見るのはものすごい情報量で、そこから選ぶのはけっこうプレッシャーでした。もっと“過剰な”絵があるかと思いましたが、そうでもなかったかな」
入選・準入選作品と牧野さんの講評、総評は7月18日発売のイラストレーションNo.211に掲載します。