第217回ザ・チョイス 鈴木千佳子さんの審査
グラフィックデザイナーの鈴木千佳子さんによる審査が、2020年11月4日に行われました。応募者は273名、応募点数はおよそ1,000点です。その審査の様子と結果をレポートします。
『〆切本』(左右社編)、『短篇集 こばなしけんたろう』(小林賢太郎著)など、印象的な装丁を多く手がけている鈴木千佳子さん。コンペの審査員を務めるのは今回が初めてだと言う鈴木さんの元に、全国から数多くの作品が届きました。
審査開始前、鈴木さんは「あくまでも私の判断なので、『残す』『残さない』だと何だか失礼な気がして。相応しい言葉を考えていたんですけど、今回は『推す』『推さない』と言わせて下さい」と一言。イラストレーションに対して真摯に向き合う姿勢が、その言葉のセレクトから窺えるようでした。
1次審査では、全作品に目をとおし「推す」作品、「推さない」作品に分けていきます。鈴木さんは、1つ1つの作品に慎重に向き合い、時には作品裏面の画材やタイトルも確認しながら、着実に審査を進めます。ゆっくりと時間をかけて、1時間30分で候補作を2分の1程度に絞りました。
休憩の際、現時点での審査基準を聞いてみると、「お仕事をご一緒したいもの」「私が好きなもの」「誰かに教えたくなるもの」という3つの基準を教えて頂きました。果たして、最終的にはどのような作品が選ばれるのか期待が募ります。
続いての2次審査でも、じっくりと作品に向き合う姿勢は変わりません。30分程で作品を見終えて、残った候補者は50名程になりました。
この後は、テーブルの上に作品を並べて検討していきます。すべての審査工程で、鈴木さんが最も時間をかけたのがこの最終審査でした。まず、明らかに「推す」と決めた作品を10点程度セレクト。その後、それ以外の作品について1つ1つ悩みながら、「推さないもの」「最終選考者」を決めていきます。
この時点で大分数は絞られましたが、誰を入選、準入選とするかを決めるのはかなり慎重な様子。「悩みますね」と思わず口からこぼれた一言からは、作品と対峙するひたむきな思いが伝わってくるようでした。1点ずつ吟味したり、作品を並び替えたり……集中した選考の時間が続きます。そして1時間に及ぶ静かな熟考の末に、入選10名、準入選6名が決定しました。
考え抜いてチョイスした、鈴木さんの“推し”はどのような作品なのでしょうか。
鈴木千佳子さんの詳しい審査評、そして気になる今回の入選作品は、2021年1月18日発売の『illustration』No.229に掲載致します。 審査結果は、以下のとおりです。
<入選>
●澁澤久実子(千葉県)●長雪恵、深町マチコ、堀北阿希、出口瀬々、SEIICHI、丹野杏香(東京都)●SHIKA、ミヤザキコウヘイ(大阪府)●吉田のばら(宮崎県)
<準入選>
●岸あずみ(千葉県)●マナベレオ、ヤギエツコ、三田圭介(東京都)●橋本佳奈(京都府)●でん(兵庫県)
<最終選考まで残った方々>
糸井みさ、せいのちさと、近藤みか、小玉桃子(埼玉県)東久世、木村沙希、宮岡瑞樹、礒拓史、山本秀佑、大庫真理(東京都)カワグチタクヤ(神奈川県)萩結(静岡県)まんじゅまる(大阪府)松栄舞子(兵庫県)